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環境の各項目について予め適正範囲を与えておくことにより、評価対象と環境の双方から正確な異常診断が可能となる。
自己復帰は異常診断にて異常と診断されたブロックを切り離し、スペアとして用意されたブロックを接続することにより実現できる。ここで課題となるのはスペアの数とブロックヘの分け方である。分割方法については、機能単位としてその評価が容易になるようにする必要がある。スペア数については、装置の予定使用時間または定期点検による交換時期を大幅に越えても異常が発生しないブロックにスペアを用意しても意味はなく、異常発生頻度が高いと予想されるブロックにスペアが1つしかないのも問題となる。自己復帰機能を実現するにおいて各ブロックの信頼性評価が基礎的な項目となる。
なお、各ブロックの信頼性はその使用部品と構造によるところが大きいため、現在作業中であるブロック毎の詳細設計完了後に信頼性評価を行いスペア数を決定する。
4. 音響通信基礎実験
臨時観測システムの基幹部はデータ伝送中継器より電力を供給されるが、その容量は制限されており、音響通信を行う際に必要となるピーク電力を補いきれない。従って、通信の合間に2次バッテリを充電し、通信時にはバッテリからの電力を主として利用する。移動体については外部からの電力供給は無く、内蔵バッテリのみで動作する。よって、両者とも電力消費を極力小さくすることが要求される。音響通信に必要な電力は通信距離、周囲の音響ノイズ等によって異なるが、受信側にて14dBのS/N比が必要とされている。また、基幹部、移動体の設置状況によっては、通信データが海底等で反射して(マルチパス)正規のデータを乱す可能性がある。
消費電力、マルチパスの影響を検討するに当たり、大型水槽にて超音波の伝送実験を行い、基礎データを取得した。
Table2に使用機器概要、Fig-4に実験系統図を示す。

Table2 Outline of instruments for use

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Fig.4 Systematic plan of the basic experiment for acoustic data

データ伝送用音響モデムは使用周波数が50kHz、伝送距離は最大1000mを想定しているが、実験に供した水槽の長さが約200mと実際の伝送距離の1/5である点から波長の比率を合せるため、使用周波数は5倍の250kHzとした。また、伝送における基礎データを採取することが目的であるため、送信波形はサイン波およびサイン波を2周期毎に位相を180°反転した位相変調波とした。波数はいずれも20波とした。
5. 実験結果および考察
実験結果から換算・推定2)した送信電力と受波器でのS/N比の関係をTable3およびFig.5に示す。送信波形は位相変調波である。この結果は淡水での実験結果から得られた伝搬損失、伝搬減衰定数を周波数および海水の条件に換算してS/N比を計算したものである。

 

 

 

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